徹底解説!セガゲームスのテクニカルアーティスト

こんにちは。

皆様いかがお過ごしでしょうか?

セガゲームス 第3事業部のテクニカルアーティスト。麓です。

 

普段はこのブログの裏方をしているのですが、今回は今年の3/30に大阪で開催された、ゲームクリエイターズカンファレンス2019(以後GCC2019)*1にて、株式会社カプコンの塩尻様とパネルディスカッション形式で講演致しまして、時間内で全て語りきれなかったということもあり、セッションのフォロー記事という形で筆を取らせていただきました。

セッションのおさらいも兼ねていますので参加できなかった方にもお伝えできるように、講演時に話した内容からも引用しつつまとめていきます。

尚、このブログではセガゲームスの事例のみを解説させていただきますので、ご了承ください。

タイトル「怖く無い、テクニカルアーティストという仕事」

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「テクニカルアーティスト(以下TAと略します)って大手企業のみしか関係の無い職種だろうから、ウチはあんまり関係ないなあ。その様な人材は、技術力が高くてデキる人なんだから、ウチにはいないなあ。中途で採用や教育もしたいけど、そんなヒマも余裕もウチにはないなあ。」
関西圏*2でCGやゲームを生業としている企業は、データの状態や仕様がはっきりとしない状態で制作に入らなければいけない事が多く、各アーティストは効率が悪くとも、根性で頑張って納期に間に合わせているといった実情をよく耳にします。
根性が必要になるときは必ずありますが、出来るだけラクできる所はラクした方が、空いた時間を工数削減やクオリティUPあてられるので、その方がいいですよね?

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今回の講演は、上のような状況に悩まされるゲーム会社の方へ向けて構成しました。

TAについて簡単に・・・

CG World Entryの記事から引用すると、

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という事で一般的な認識としては上記元記事「CGWorld Entry.jp」を参照していただくとして、様々な会社の事情を元にTAに必要な知識をリストアップすると・・・

  • C#やPythonなど業務に必要な各言語でのプログラム技術、及びShader関連知識
  • 絵が描ける、パースが取れる、色彩の説明が出来るなどアートスキル 
  • ゲームエンジンのフロー知識と、DCCからの出力フロー知識(描画フロー把握、用語知識など)
  • ゲームハードに関しての基本知識(ハードスペック、描画性能など)
  • VMやNASなどのストレージやライセンスサーバ関連、SubversionやPerforceなどサーバ知識技能。
  • Windows、MacOS、Linux、iOS、Androidなど色々なOSへの造詣
  • Mayaや3DS MAX、Houdiniと言ったメジャーな3DDCCツールの知識
  • PhotoShopやSubstance、ZBrushや3D-coatといった様々なツール知識
  • 過去のツールやゲームハードに関しての様々な知識
  • Havok,Simplygon,SpeedTreeやumbraなど様々なミドルウェア製品知識
  • MotionCapture関連での作業フローの理解と、VICONや各社ツールの知識
  • 画角やEV値やルーメン、カンデラといった単語が理解出来るくらいの照明技術やカメラ映像知識
  • SiggraphやGDC、CEDECなどでの様々な新規技能を能動的に取得できる知識欲
  • 交渉力、説得力、判断力などのコミュニケーションスキル
  • 技術的な仕組みを判りやすくまとめ、説明できるプレゼン力

等々・・・

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だと思います!
なのでどれか1つのスキルを持っているだけでもいいんです。
極論これから始めてもいいんです。効率化を考える事からぜひ始めましょう!
現状の作業の中で、“これ面倒だな”とか“単調な作業をなんとかしたいな”と思える人は向いていますので、そこからDCCツールを深いところまで覚えてみたり、Scriptを覚えたり、Shaderを書いてみたりして、第1歩を踏み出しましょう!

1日にどんな仕事をしているの?

普段何をやっているのか、どんな風にタスクをこなしているのか見えずらいとよく言われるTAですが一つ、とある1日を抜き出して見ました。

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この部分に関しては以前各ゲーム会社のTAで対談させていただいた以下の記事内でも深く触れています。

cgworld.jp

ざっと斜め読みしただけでも1日にいろんな事が起き、いろんなタスクをこなしています。
専門知識を持って各所のミーティングに参加し、情報共有ができる身軽さ。これが無いとTAは回っていかないという事がなんとなく読み取れますでしょうか?

また、本当に細かいことでも1時間単位でもどんな問い合わせ、作業があり、どういう事を行ったかというログを記録しておくことはとても重要です。多くのタスクを同時にこなしていると、普段何をやっているか分からないと言われることがありますし、自分自身もよく分からなくなることも多々あります。

具体的にどんな効率化が出来たの?

普段の仕事は個人単位、チーム単位様々ですが、ここでは個人単位の割と簡単で良くある実例をあげて解説します。
対応時期が古いものもあるので現在ではまた違った手法もあるかもしれませんが・・・。

Photoshop効率化

<相談内容>Photoshopで多くのアイコンなどのパターン画像を作成して、一つ一つのアイコンをレイヤーセットで管理しています。そのデザイナーはレイヤーセットを必要なものだけ表示させ、別名でPNGに保存を手作業でレイヤーセット分だけやろうとしていました。その数60枚ほど。修正の度に毎回その作業をするのは地獄です。

<対応>メニューから選ぶだけで所定のフォルダにレイヤーセット毎の画像を保存する、スクリプトを作成して提供しました。30分〜1時間を予定していた作業が1分弱で終わるようになりました。

Photoshopだけに関わらず、3D用のツール以外の効率化作業は細かい単位で割とよく発生します。こういう処理をその場その場でサクッと作ってしまうといったような対応をTAには求められます。

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座標系を超えろ!?3Dツール間コンバート

<相談内容>過去に3dsMaxでキャラクターデータ、XSIでモーションデータを作っていてその二つのデータをMayaで融合させ、ゲームエンジンへ持って行きたいが、アニメーションが合わない。

<対応>キャラとアニメーションが合わない原因は3dsMaxとXSIの座標系と大きさの単位の違いの問題が絡み合っていました。キャラのコンバートは3体のみだったので一つ一つ対応。アニメーション数がそれなりにあるということで、"SEGA BatchFramework"*3の仕組みでワークフローを自動化。手作業でコンバートするつもりだったアニメーションデータをボタン一つで対応可能に。1体1分程度の手作業を10秒位に短縮。また、検証作業自体もある程度短縮。

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上記事例の座標の違い

横断サポートの強み

<相談内容>プロジェクトAからもらったデータを流用しようとしているプロジェクトB、この2プロジェクト間では使っているゲームエンジンが違いデータの整合性が取れずお互いがお互いのエンジンの事情も知らない。

<対応>プロジェクトAのサポートをしたことがあるTAがどうやってデータを変換すれば欲しいフォーマットになるのかを検証し、自動化フローまで製作。検証時間の削減と変換時間の短縮。そもそも変換が出来なかったら目コピで一から作っていたかもしれない・・・。

TAはセガゲームスの場合複数のプロジェクトやパートに対してワークフロー、パイプラインの構築を手伝ったりします。
その性質上、各プロジェクトやパートのデータ事情に詳しくなり、自然にプロジェクト間の架け橋を担うようになります。

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どんなツールを作成しているの?

ワークフロー構築ツール

効率化をするための個々のツールはたくさん作成していますが、処理内容を詳細に分析していくと、複数のプロジェクトでも共通のオペレーションが存在しています。

例えば命名規則だったり、何かをエクスポートする処理だったりといった、フローのプリセット化、オペレーションの共有化を目指して用意しているものの一つが上記に出てきた「SEGA BatchFramework」です。

●講演資料からスナップショット

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CEDEC2015当時の講演資料を見ていただけますとさらに詳しく知ることができると思いますが、このツールの大きな効果は以下の2点です。

  • 処理内容を再利用することにより、ワークフローの自動化を構成する時間を短縮できた。

  • 自動化を自分で考えられるようになり、さらに素養がある人の場合は自分でアクションの一つを作るように登録用のスクリプトをVBSやpython、mel、maxScriptなどで作成できるようになった。

データデバッグビューア

過去のBlog記事からの引用となりますが、パイプラインを走っているデータがどういう状態になっているのかを視覚化するためのツールは必要不可欠です。

ここまでにいくつか出てきた要件の「データの検証作業」に大きく貢献しています。

こういったツールがないと、実際にゲームエンジンで描画されたデータを見て、「もしかしたらこれが間違っているのかもしれない・・・」と推測だけでデータのデバッグをする羽目になります。

techblog.sega.jp

 

これ以外にもこのSEGA Techblogの過去の記事では、セガグループのTAがそれぞれ記事を書いていて、そのツールも紹介しています。

是非、過去記事も参考にしてみてください。

記事一覧 - SEGA TECH Blog

TAのプロジェクトへの関わり方は?

この図に関しては時代や会社事情により様々ですが、セガゲームスの場合はまず各プロジェクトにTAがそれなりにアサインされていて、その人とのコミュニケーションを密にとる横断型TAチームがあります。

基本的にTAはノウハウの共有も担うものですので、プロジェクト担当のTAはプロジェクト内のセクション間に、そして全体横断型のTAチームはプロジェクト間のノウハウの共有に一役買っています。

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また、TA同士の密な情報共有により、問題解決への対応速度はどんどん上がっていきます。

たとえ相談された人が知らなくても、知っていそうなTAに聞けばいいのですから。

若手、新人TAについて

採用は右のバナーのリクルートページを参照いただければお分かりだと思いますが、(新卒採用情報→職種紹介)数年前から1年目からTA職を担える人を採用しています。

過去にCEDEC等ではTAはある程度現場の経験を積まないとなれないとされてきました。以前はTAの数は少なく、一人で多くの問題に手早く対応しなければいけませんでした。また、迅速な対応を求められるため、ある程度データ制作をしたことがないと本当に困っていることや、もっと全体を見通しての効率化にたどり着くことができなかったのです。

ですが今では会社全体を見てもTAは足りないと言われつつもそれなりに増え、役割分担も明確になりつつあります。

そういった状況ですので、先人のTAから多くのことを学ぶことができますので、経験不足の壁を埋める速度は懸念事項からは除外されてきつつあります。

ゲーム制作未経験なTAはまず、出来るだけデザインワークフローに関わる仕事をすることが多いです。

例えば上記データデバッグビューアの項のように、中間ファイルフォーマットのビューアを担当することで、デザイナーはどういうデータを出力しているのかを知ることができます。

そして実際にデータを作成しているデザイナーとも出来るだけ接点を作り、要件定義→仕様検討→実装までを一人で対応する機会を設けます。

もちろん周囲は全力でこれを助けます。

こうして現在も暗中模索の中、TAを育てる取り組みを繰り返しています。

この過程ではシニアTAの存在も大きく影響します。もし新人からTAをやらせてみたい場合は、まずはシニアTAの地位確立、立ち回り確保も重要になります。 

そうしてTAはアートアセットのパスを主軸にしながらも、必要に応じて各所のパイプをつなぐ役割を担うものです。

ゲーム全体や開発全体のパイプ役として日々活躍しています。

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まとめ

TAがいる現場といない現場ではデザインワークフローはかなりの差が出ます。

アーティストの作業面のフラストレーションの改善、工数の削減、クリエイティブな作業への注力、そしてノウハウの共有。

セクションを超えた円滑なパイプライン構築など。

最初の文章では(GCC2019ということもあり)関西圏へ向けてのメッセージとして発信していますが、これは日本のゲーム業界全てに当てはまることだと思います。

是非とも"御社"でもTAの採用、育成を推進してみませんか?

また、セガゲームスにはこのようにTAが活躍しやすい土壌があります。

ゲームを作ることも好きだけど、より作るための効率改善に興味があり、自分の強みを活かせると感じているみなさん。

セガゲームスで一緒に働きませんか?

 

採用情報 | セガ企業情報サイト

©️SEGA

*1:ゲームクリエイターズカンファレンスhttp://www.gc-conf.com/

*2:GCC2019は関西で開催したカンファレンスということで関西圏向けということになっています。

*3:Maya,SoftimaeXSI,3dsMax用に作られた自動化フロー作成ツール※詳細は次を参照

cedil.cesa.or.jp

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