CEDEC 2022 セガグループによるセッション紹介!

今年も日に日に暑さが増し、CEDECが近くなってまいりました。

昨年に続きオンラインで開催されるゲーム業界最大のカンファレンスに、

セガからも多くの社員が登壇します!

CEDEC2022

cedec.cesa.or.jp

会期:2022年8月23日(火)~8月25日(木)

今回で7回目となる、セッションと登壇者紹介に加え、ここでしか見れない当日の資料の抜粋チラ見せ付きで株式会社セガ、第3事業部の麓からご紹介致します。

 

  • 開発もQAも自動テスト!「LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶」のQAテスター参加で進化した「テスト自動化チーム(仮)」の取り組みについて
    • セッション内容
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  • 『PSO2 ニュージェネシス』長期運営タイトルにおける、大規模バージョンアップを支えた開発手法の紹介
    • セッション内容
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  • 『PSO2 ニュージェネシス』アバターカスタマイズ ローンチ作業を振り返って
    • セッション内容
    • 講演者
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  • 『PSO2 ニュージェネシス』今更聞けない!広大なフィールドの作り方
    • セッション内容
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  • 『PSO2 ニュージェネシス』におけるエフェクトエディタ制作事例
    • セッション内容
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  • withコロナ時代:ワーキングペアレントの働き方と悩み/上司・経営者の立場での悩み
    • セッション内容
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開発もQAも自動テスト!「LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶」のQAテスター参加で進化した「テスト自動化チーム(仮)」の取り組みについて

セッション内容

近年のゲーム開発では、開発規模が拡大するとともに、マルチプラットフォームや多言語対応、多拠点開発(海外・在宅勤務を含む)の必要性が増し、開発スピードや品質の維持のためにテスト自動化の重要性が日々高まっています。一方で、ゲーム開発におけるテスト自動化は、一般的には開発部門またはQA部門の片方が主体となって行われることが多く、どちらかが得意な切り口(単体テスト中心、画像認識によるプレイテスト中心など)に偏りがちです。
本講演では、開発部門とQA部門からそれぞれ参加して、一つの「テスト自動化チーム(仮)」を結成し、プログラマもQAテスターも各々の得意分野の自動テストを書くことで、より広範囲かつ効果的なテスト自動化を達成して、開発スピードと品質の向上に貢献した事例について、マルチプラットフォーム・多言語・多拠点開発となった「LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶」の実例をもとに、開発部門とQA部門のそれぞれの視点を交えて紹介します。

 

講演者

株式会社セガ 
第1事業部
阪上 直樹


プロジェクト業務部
門脇 健造

開発技術部
粉川 貴至

08月24日(水) 14:50 〜 15:50 レギュラーセッション

cedec.cesa.or.jp

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CEDEC 2021 セガグループによるセッション紹介!

今年もやってきました、毎年恒例のCEDECでのセガグループによるセッション紹介です!
株式会社セガ、第3事業部の麓です。

昨年に続きオンラインで開催されるゲーム業界最大のカンファレンス

CEDEC2021

 

cedec.cesa.or.jp

https://cedec.cesa.or.jp/2021/

会期:2021年8月24日(火)~8月26日(木)
にグループ(および関連会社)から今年も登壇します!
今回で6回目となる、セッションと登壇者紹介に加え、ここでしか見れない当日の資料からの抜粋付きでご紹介します。

 

プランナーもハックしよう ~業務効率化、ローコード開発とテクニカルプランナー~

セッション内容

本セッションでは実務においてプランナーが行った業務効率化の例をご紹介します。
その際に利用した、プランナーでもできる自動化としてローコード開発の紹介も行います。
これらの取り組みを通じて、雑務や人力の仕事が多いプランナー業の改革と、将来の新たなプランナー像であるテクニカルプランナーのキャリアパスを提起します。

 

講演者

株式会社セガ 
ゲームコンテンツ&サービス事業本部 第4事業部開発2部
瀧澤 翼
リードプランナー

08月25日(水) 13:30 〜 13:55 ショートセッション

cedec.cesa.or.jp

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Android/iOS 実機上での自動テストをより楽に有意義にする為に ~端末管理・イメージ転送・動画記録等の周辺情報のノウハウ共有~

セッション内容

当講演では、Android/iOS 向けタイトルにおける、オンプレミスで動作する実機上での自動テスト環境構築・運用時に得たノウハウについて共有します。
中でも一般的に言及が少ない、自動テスト環境を構築するのに必要な"周辺情報"にフォーカスして解説を行います。
"周辺情報"とは、テスト実行そのものやテストフレームワーク"以外"の以下の内容を指します。

・端末の管理や情報の取得
iOS 端末の IP アドレスを取得するにはどうしたらいいか等。
・アプリケーションイメージの転送や起動
iOS のアプリケーションイメージをコマンドラインで実機に転送・起動するのはどうすればいいのか等。
・実機上の映像の動画撮影
Android/iOS 実機上でゲームの映像を録画する場合それにはどんな手段があってそれぞれのメリットデメリットは何があるか等。
・テスト結果の取得と整形、通知

その他、環境構築後の運用時に発生した問題とその解決方法の共有も行います。
当講演を通じ、 Android/iOS 実機上で自動テストやってみようかな、と思う人が少しでも増えれば嬉しく思います。

講演者

株式会社セガ
開発技術部
竹原 涼
廣島 岳史

08月25日(水) 14:50 〜 15:50 レギュラーセッション

cedec.cesa.or.jp

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進化したSympathy:『PSO2:NGS』が奏でるインタラクティブミュージック

セッション内容

『ファンタシースター』シリーズの最新作『ファンタシースターオンライン2 ニュージェネシス』(通称:PSO2:NGS)では、『PSO2』で構築した既存のBGMシステム「Sympathy」をベースにして、新たな要素、機能を追加した新システム「Sympathy2.0」を制作致しました。そこに至る過程について、システム設計からツールのバージョンアップ、実装例までをご紹介できればと思います。

講演者

株式会社セガ
ゲームコンテンツ&サービス事業本部 第2事業部 サウンドセクション
小林 秀聡
サウンドディレクター・サウンドクリエイター

ゲームコンテンツ&サービス事業本部 第3事業部 第3開発1部 第3プログラムセクション
増田 亮
リードプログラマー

08月26日(木) 14:50 〜 15:50 レギュラーセッション

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「それ、どれだけ売れるの?」キャラクターIPソシャゲにおけるIP商品力の定量化と取り組み

セッション内容

本セッションでは、キャラクターIPを使用したソーシャルゲームにおけるIP商品(=販売するキャラクター)の商品力を客観的に把握するための運営上の取り組みについてご紹介します。
キャラクターIPを使用したソーシャルゲームの運営には、事業上大きな課題があります。それは売上がその時々に販売するIP商品力に影響され適切な運営の弊害になるというリスクです。まずこの運営リスクについてご説明します。
次に、課題解決の取り組みとして、リスクを低減するため「商品力」を定量的に把握する試みについてご説明します。主に個人の売上データを用いた定量化するためのクリアすべき具体的な課題と統計的分析手法を用いた対策方法について解説します。
また、定量化した商品力指標の運営上の利用例を紹介します。

講演者

株式会社セガ

戦略支援部
柴宮 朋和
ビジネス&データ分析1課 課長代行 / データアナリストスペシャリスト

第4開発2部
川上普史
マネージャー/運営リーダー

08月25日(水) 11:50 〜 12:15 ショートセッション

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ダウンロード時間を大幅減!~大量のアセットをさばく高速な実装と運用事例の共有~

セッション内容

近年、モバイルゲームの規模も大規模化しており、そのアセットデータのダウンロードに掛かる時間も増大する傾向にあります。
弊社では、アセットデータのダウンロード待ち時間を HTTP/2 を採用することにより低減することに成功しました。
当講演では、この HTTP/2 の仕様のゲーム開発者向け解説とモバイル向けタイトルでの導入・運用事例を紹介します。
仕様の解説では、 HTTP/2 を採用すると何故ダウンロード時間の低減が可能なのかに加え、クライアントサーバ間の通信の効率化に寄与する点についても触れます。
導入事例では、具体的にアセットダウンロードがどれだけ高速になったかの実例も併せて紹介を行います。
運用事例については、HTTP/2 はゲーム業界においてはまだ事例紹介が少なく枯れ切っていない面も多くある為、採用したタイトルの運用中に実際に発生したトラブルとその解決方法について特に時間を掛けて紹介を行う予定です。

講演者

株式会社セガ
開発技術部
竹原 涼

山田 英伸

08月25日(水) 11:20 〜 12:20 レギュラーセッション

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ゲーム業界の男性育児休業~職場復帰の実態。リモートワークでの育児両立の難しさと働き方。3社事例紹介。

セッション内容

2020年より、ゲーム業界でもリモートワークが恒常化してきました。
その中で、ワーキングペアレントの働き方はどのように変わったでしょうか?
新たに生まれた課題は何でしょうか?

「仕事への影響・不安」を持ちながらも、育児休業を取得し、職場復帰した登壇者たちが、「男性育児休業の実態」と、「リモートワークでの育児両立の難しさと働き方」をテーマに、3社の事例を紹介します。

厚生労働省が発表している「男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集」を元に、「制度の説明」「取得方法」を冒頭で紹介。
その後、本セッション用にゲーム業界各社で取った最新の「男性の育児休業~復帰後の働き方(リモート含む)アンケート」についての共有を行います。

<2021年版アンケートのご協力をお願いいたします>
●【男性育休アンケート】対象者:「取得経験者」「取得しなかった方」「非該当者(性別問わず)」⇒それぞれのご意見をお聞かせください

docs.google.com

・「上司」「経営者」の立場からの意見、考え方も、一例としてお伝えいたします。
・各社社内コミュニティの紹介や、オンライン環境での活動状況もお話しいたします。

 

講演者

セガサミーホールディングス株式会社

総務本部 コミュニケーションサービス部 コミュニケーション推進課
茂呂 真由美

株式会社セガ

ゲームコンテンツ&サービス事業本部 第3事業部 第3開発1部 第3プログラムセクション
増田 亮
リードプログラマー

ゲームコンテンツ&サービス事業本部第4事業部戦略支援部ビジネス&データ分析2課
竹内 公紀
データアナリスト/課長代行

ゲームコンテンツ&サービス事業本部第4事業部第4開発2部第一ソフト開発セクション
渡邉 吉治
リードプログラマー

ほか

08月24日(火) 11:20 〜 12:20 パネルディスカッション

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リモートワークでどうなった?!ワーキングペアレントの働き方と悩み

セッション内容

Zoom参加者は、「扱って欲しい議題」「悩み」「相談したいこと」を、CEDEC受講登録後のマイページの当セッション専用申込フォーム内「アンケートリンク」より、事前提出してください。

事前提出いただいた議題を取り上げ、「3つのパート」に分け、ディスカッションします。「リモートワーク下での悩み・議題」を優先して取り上げますが、それ以外でも、「課題感が大きい」「議論の必要性が高い」と判断したものは、議題に取り上げさせていただきます。

●ディスカッション<1>(茂呂)
事前アンケートで「多かった悩み」「気になった悩み」をピックアップして進行

●ディスカッション<2>(竹内)
「育児休業~復帰後に関して」「男性特有の悩み」をピックアップして進行

●ディスカッション<3>(佐々木)
「当人以外の職場の仲間・管理職・人事総務・経営者等」の議題をピックアップして進行

今回の受講をその場限りのものにせず、それぞれの職場に今回の知見を持ち帰り、共有していただけると嬉しいです。
ゲーム業界全体が、多様な働き方について相談しやすい環境になることを願っており、その話題作りのキッカケとなるセッションになることを目指しています。

 

講演者

セガサミーホールディングス株式会社

総務本部 コミュニケーションサービス部 コミュニケーション推進課
茂呂 真由美

株式会社セガ


ゲームコンテンツ&サービス事業本部第4事業部戦略支援部ビジネス&データ分析2課
竹内 公紀
データアナリスト/課長代行

ほか

08月24日(火) 13:30 〜 14:30 ラウンドテーブル

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メタバースにおける飲用体験システムの開発:VRShaker

セッション内容

現実空間での飲用、喫食体験は人間関係を形成する上で重要な物の一つと言えるだろう。しかし、近年の社会状況からそれらの体験が難しい物となっている。
そこで、自宅にいながら、遠隔地の人と共にバーで他の人に作ってもらったカクテルを味わう体験ができるシステム:VRShakerを製作した。
バーテンダーのカクテルシェイク動作をトラッキングし、現実世界の遠隔地にあるVRShaker筐体がカクテルシェイカーをシェイクする。体験者は構築されたメタバース上で呑みながら会話をすることができる。
本セッションでは、コロナウィルスと共生しなければならない現代においてメタバースを用いた喫食体験とその可能性について議論する。

講演者

株式会社セガ

アミューズメントコンテンツ開発生産本部 メダル研究開発部
鈴木 謙太

ほか

08月26日(木) 11:20 〜 11:45

cedec.cesa.or.jp

 

いかがでしょうか?

今回紹介したセッションで聴講したい!と思ったセッションはありましたか?
CEDECを聴講して情報収集や交流をし、ゲーム業界の今を知り、業界の未来について語り合いませんか?
それでは皆さんCEDECでお会いましょう!

 

私達は将来CEDECに登壇してみたいと思っている、やる気のある方を求めています。
そんな貴方、以下にアクセスしてみませんか?

 

recruit.sega.jp

 

※複数社登壇の場合でもセガの社員のみ表記しています 
©SEGA

クォータニオンとは何ぞや?:基礎線形代数講座

---【追記:2022-04-01】---

「基礎線形代数講座」のPDFファイルをこの記事から直接閲覧、ダウンロードできるようにしました。記事内後半の「公開先」に追記してあります。

--- 【追記ここまで】---

みなさん、はじめまして。技術本部 開発技術部のYです。

ひさびさの技術ブログ記事ですが、タイトルからお察しの通り、今回は数学のお話です。

#数学かよ って思った方、ごめんなさい(苦笑)

数学の勉強会

弊社では昨年、有志による隔週での数学の勉強会を行いました。ご多分に漏れず、コロナ禍の影響で会議室に集合しての勉強会は中断、再開の目処も立たず諸々の事情により残念ながら中止となり、用意した資料の配布および各自の自学ということになりました。

勉強会の内容は、高校数学の超駆け足での復習から始めて、主に大学初年度で学ぶ線形代数の基礎の学び直し 、および応用としての3次元回転の表現の基礎の理解といった感じです。

「線形代数」とは、微積分と並び理工系の科学・技術の諸分野で基礎中の基礎として用いられる数学の分野で、ゲームでは主に3DCGの技術的基礎として応用されています。昨今のAIブームでも一時期話題になりました。 タイトルにある「クォータニオン」とは、日本語では「四元数」と訳され、ゲームではキャラや背景などを3次元回転させるときに応用されるもので、勉強会の中では最後に出てくるラスボスであり少し難しい数学の概念です。

勉強会の趣旨は、この「クォータニオン」を数学的にきちんと理解することを えさ ゴールとして、そのために(実際はそれだけでなくさまざまな技術の基礎となっている)「線形代数」の基礎をきちんと学び直そうということでした。

なぜ数学?

ゲーム開発においても分業化・専業化の流れは著しく、ゲームアプリケーション(みなさんに遊んで頂いているゲームそのもの)を開発する際、いわゆるゲームエンジンや各種ライブラリを用いるのが当たり前になっています。これらエンジンやライブラリは、ゲーム開発者にさまざまな機能を提供し効率よく開発できるようにすることが役割であり、極端な話、三角関数を全く知らなくても3Dゲームを作れる時代になっています。 しかしながら例えばゲーム固有の表現のためにシェーダー(画面を描画する機能)をカスタマイズしたい場合や、当然のことながらエンジンやライブラリそのものの開発者は、ある程度のさまざまな数学の知識が必要となります。技術的に高度なことをしようと思うとなおさら深い理解が必要です。

このように数学や物理学は、ゲーム業界のみならず理工系のさまざまな分野で、科学者・技術者を根元から支える基礎となり重要な武器となっています。

資料を公開します

今回、この勉強会用に用意した資料「基礎線形代数講座:線形代数 回転の表現」を一般に公開いたします。全8講、本文が全部で140ページのPDFで、各講は以下のような標題です。

  • 第1講 イントロダクション
  • 第2講 初等関数
  • 第3講 ベクトル
  • 第4講 行列 I:連立一次方程式
  • 第5講 行列 II:線形変換
  • 第6講 行列 III:固有値・対角化
  • 第7講 回転の表現 I
  • 第8講 回転の表現 II

線形代数 基礎の本質的な部分をできるだけ簡潔に分かりやすく学べるように全体を組み立ててみました。各項目を学ぶ順番や手法、一部は定義すら一般的なものと違う(例:行列式)こともあります 。いわゆる「大人の学び直し」ではあるのですが、内容はガチの数学となっています。 記事の最後に公開先へのリンクを張っておきますので、興味のある方は参考にして頂ければと思います。

特に学生の方で、この資料で線形代数を学んでみようと思われた奇特な方がいらっしゃれば、言うまでもないことですが読んだ後改めて講義で指定されている教科書を読んでみましょう。きっとこれまで以上に理解が深まることと思います。

この記事では、その中から「クォータニオン」の導入部分である、第8講の第2節までをそのまま引用します。導入部なので内容は平易となっていますが、複素数・行列・三角関数に関するある程度の知識がないと理解は難しいと思われます。ぜひ紙と鉛筆を用意して、ご自身でも図や式を書いたり計算したりしながら、じっくり読んでみてください。

基礎線形代数講座からの引用

【第8講】回転の表現II


【8-1】はじめに

本講では、4種の3次元回転の表現の最後としてクォータニオンについて学ぶ。クォータニオンは日本語では四元数(しげんすう)と訳されるもので、1843年にハミルトンにより発見された複素数を拡張した代数体系であり、3次元の回転の表現としても多くの利点を備えている。
その性質から特に計算機を用いる場合にも他の表現手法に比べ優位な点が多く、近年 宇宙機を始め、3DCGやCV、ロボット工学等々さまざまな分野で応用されている。一方で他の表現手法に比べるとやや抽象的でその本質(4次元空間に埋め込まれた3次元回転)が捉えづらい面も否めない。本講では、拡張の元になった大きさ1の複素数の積による複素平面内での回転の復習から始め、ハミルトンによる発見に至るまでの過程*1をたどる事でクォータニオンを導入し、その性質を分かりやすく解説する。


●おさらい
任意の複素数 $ x+iy $ に大きさ $ 1 $ の複素数 $ \cos\theta+i \sin\theta $ を掛ける事は複素平面内での $ \theta $ 回転を表していた。実際 \[ (x'+iy')=(\cos\theta+i\sin\theta)(x+iy)=(x\cos\theta-y\sin\theta)+i(x\sin\theta+y\cos\theta ) \] この式で、$ 1 $ と $ i $ をベクトルの基底としてみると、 \[ x→x'=x\cos\theta-y\sin\theta,\ y→y'=x\sin\theta+y\cos\theta \] という線形変換と見ることができて、行列形式で書けば \[ \begin{eqnarray} \left[ \begin{array}{c} x' \\ y' \\ \end{array} \right]=\left[ \begin{array}{cc} \cos\theta & -\sin\theta\\ \sin\theta & \cos\theta\\ \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} x \\ y \\ \end{array} \right] \end{eqnarray} \] となり、すなわち複素平面である $ 1-i $ 平面での $ \theta $ 回転を表している事がわかる。

これの本質は、$ i $を掛けるという事:基底 1 と $ i $ との閉じた代数が、$ 1-i $ 平面内で一回りする回転に相当していることにある。


【8-2】クォータニオンの導入:ハミルトン劇場

[8-2-1] 拡張複素数で複素( 3次元)空間を回したい

ハミルトンは複素数を拡張して、虚数単位 $ i $ の他に独立な別の虚数単位 $ j $ を導入 $( i^2=-1,\ j^2=-1,\ \overline {i}=-i,\ \overline {j}=-j)$、$ 1,i,j $ の 3つの元で $ 1-i $平面、$ 1-j $平面、$ i-j $平面それぞれの回転を表現できないか?と考えた(つまり複素平面を複素空間に拡張できないか?ってこと) 。

「独立な異なる虚数単位 $ i,j $」に違和感がある人もいると思う。新しい代数として拡張していっているので、うまく拡張できさえすればあとは「慣れ」ではあるのだが「複素数」を以下のように解釈することで別の虚数単位を導入するという拡張も違和感が減るかもしれない。
おさらい*2:2行 2列の行列 $ \begin{eqnarray} I= \left[ \begin{array}{cc} 0 & -1\\ 1 & 0\\ \end{array} \right] \end{eqnarray} $ を考えると(この行列は 上の おさらいで出てきた 2次の 回転行列で $ \theta=\pi/2 $ としたものでもあることに注意)、 $ \begin{eqnarray} I^2= \left[ \begin{array}{cc} -1 & 0\\ 0 & -1\\ \end{array} \right] = -E \end{eqnarray} $ ( $ E $ は単位行列 )となる(つまり 2乗して -1)。また行列 $ Z=xE+yI\ (x,y∈\Bbb R ) $ を考えると、 $ \begin{eqnarray} Z = \left[ \begin{array}{cc} x & -y\\ y & x\\ \end{array} \right] \end{eqnarray} $ なので、$ Z = O $ となるのは $ x=y=0 $ のときのみ(つまり $ E $ と $ I $ は線形独立)。この行列 $ Z=xE+yI $ に対し $ E $ を $ 1, I $ を $ i $ に対応させることで、複素数 $ z=x+iy $ に対応させる事が可能となる。
ここでさらに別の行列 例えば $ \begin{eqnarray} J = \left[ \begin{array}{cc} 1 & -\sqrt{2}\\ \sqrt{2} & -1\\ \end{array} \right] \end{eqnarray} $ を考えると、$ J^2=-E $ を満たし、この $ J $ を含め $ E,I,J $ が線形独立であることは容易に確かめられる。このような「複素数の拡張」(上の $ J $ の事)がうまく行くかどうかは別にして「違和感」のない表現もやろうと思えば可能ではある。


以下、ハミルトンがクォータニオンを発見するまでの過程*3をたどってみよう。
ハミルトン:$ 1-i $平面と $ 1-j $平面の回転は当然できた。


でも $ i-j $平面がうまくいかない。 $ i\times j $ の扱いがどうにもこうにも…
とりあえず $ i\times j $ を $ ij $ として回るようにはできたけど*4、この $ ij $ って本来 $ i $ にならないと $ i-j $平面にはならない。でも $ ij = i $ としてしまうと $ i $ を掛けても $ -j $ にならずに $ -1 $ となってうまく回らない。どうしたものか・・・
(ちなみに後に別の数学者により、このような $ 1,i,j $ による 「複素数の拡張」(三元数に相当)は、うまく行かない事が証明されている。)


[8-2-2] 4次元? マジか 4次元??

ある日運河のほとりを歩いている時(実話*5)にひらめいた: もう一つ虚数単位を導入して $ i\times j=k $ としてみよう。実数単位 $ 1 $ と虚数単位 $ i,j,k $ で 4次元になるけど、うまくいくかも・・・
回転面は $ 1-i, 1-j, 1-k $平面, $ i-j, j-k, k-i $平面の6面になるのか。3次元回転をうまく取り出すには、$ i-j, j-k, k-i $平面の回転がこんな風になるといいのかな?


●$ i $ を掛けると?:想定図のように $ j-k $平面を回すため、$ ij=k $ としてみよう


お、$ j-k $平面だけでなく $ 1-i $平面も同時に回るんだ。そりゃそうか。しかもそれぞれの平面内で回りそうだ。
角度 $ \theta $ の場合として「大きさ」1の $ (\cos \theta+ i \sin \theta) $ を、4次元に拡張した「複素数」$ (w+ix+jy+kz) $ に( $ i^2=-1,\ ij=k, \ ik=-j $ に注意して)掛けてみよう:
\[ \eqalign{ (w'+ix'+jy'+kz')=(\cos\theta&+i\sin\theta)(w+ix+jy+kz)\\
=&w\cos\theta+ix\cos\theta+jy\cos\theta+kz\cos\theta\\ &+iw\sin\theta-x\sin\theta+ky\sin\theta-jz\sin\theta\\ =&(w\cos\theta-x\sin\theta)+i(w\sin\theta+x\cos\theta)\\ &+j(y\cos\theta-z\sin\theta)+k(y\sin\theta+z\cos\theta) \tag{8-2-1}\\ } \]
確かに $ w-x $平面( $ 1-i $平面:下から2行目)と $ y-z $平面( $ j-k $平面:下から1行目)がそれぞれの平面内 で同時に別々に回っている*6

つまりこういうこと
\begin{eqnarray} \left[ \begin{array}{c} w' \\ x' \\ y' \\ z' \\ \end{array} \right]=\left[ \begin{array}{cccc} \cos\theta & -\sin\theta & 0 & 0\\ \sin\theta & \cos\theta & 0 & 0\\ 0 & 0 & \cos\theta & -\sin\theta\\ 0 & 0 & \sin\theta & \cos\theta\\ \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} w \\ x \\ y \\ z \\ \end{array} \right] \end{eqnarray}


●$ j $ を掛けると?:想定図のように $ k-i $平面を回すため、$ jk=i $ としてみよう


およ。さっきの $ i $ を掛けて $ j-k $平面をうまく回せる条件:$ i\times j=k $ と合わせると、$ ij=k,\ ji=-k $ となって、なんと積は可換じゃなくなる! まあしょうがないか…。

角度 $\theta$ だと同様に:
\[ \eqalign{ (\cos\theta&+j\sin\theta)(w+ix+jy+kz)\\ =&(w\cos\theta-y\sin\theta)+j(w\sin\theta+y\cos\theta)\\ &+k(z\cos\theta-x\sin\theta)+i(z\sin\theta+x\cos\theta) \tag{8-2-2}\\ } \]
ん、これも別々に回っている。

●残り $ k $ を掛けると?:想定図のように $ i-j $平面を回すため、$ ki=j $ としてみよう


これも角度 $\theta$ だと同様に:
\[ \eqalign{ (\cos\theta&+k\sin\theta)(w+ix+jy+kz)\\ =&(w\cos\theta-z\sin\theta)+k(w\sin\theta+z\cos\theta)\\ &+i(x\cos\theta-y\sin\theta)+j(x\sin\theta+y\cos\theta) \tag{8-2-3}\\ } \]

●とりあえず分かったこと

虚数単位 $ i,j,k $ に対して積を $ ij=k, ji=-k, jk=i, kj=-i, ki=j, ik=-j $ として $ w+ix+jy+kz $ に左から $ \cos\theta+i\sin\theta $ を掛けると、$ 1-i $平面, $ j-k$平面が同時に $ \theta $ 回転 する。$ j,k $ で回しても同様。でもこのままだと$ 1-i $平面で余計な回転が発生し、最終的に実現したい純粋な 3次元の回転を切り出せない。何かうまい方法はないのだろうか?

つまりこうなって欲しい
\begin{eqnarray} \left[ \begin{array}{c} w' \\ x' \\ y' \\ z' \\ \end{array} \right]=\left[ \begin{array}{cccc} 1 & 0 & 0 & 0\\ 0 & 1 & 0 & 0\\ 0 & 0 & \cos\theta & -\sin\theta\\ 0 & 0 & \sin\theta & \cos\theta\\ \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} w \\ x \\ y \\ z \\ \end{array} \right] \end{eqnarray}


●そういえば非可換だった*7

非可換なので、右から掛けたらどうなる?
右から $ i $ を掛けた場合:

なんと $ 1-i $平面は同じ向きで、$ j-k $平面は逆向きに回る!じゃあ $ -i $ だとその逆になるだろう。

右から $ -i $ を掛けた場合:

これなら、左から $ i $ を、右から $ (-i) $ を掛けることで $ 1-i $平面の回転だけを無くせそう。


●というわけで

左から $ i $ 右から $ -i $ を掛けた場合:

$ j-k $平面は2倍回りそうだけどw やってみよう。
\[ \eqalign{ (\cos\theta&+i\sin\theta)(w+ix+jy+kz)(\cos\theta-i\sin\theta)\\ =&(\cos\theta+i\sin\theta)\{(w\cos\theta+x\sin\theta)+i(-w\sin\theta+x\cos\theta)\\ &+j(y\cos\theta-z\sin\theta)+k(y\sin\theta+z\cos\theta)\}\\ =&w\cos^2\theta+x\sin\theta\cos\theta-(-w\sin^2\theta+x\sin\theta\cos\theta)\\ &+i(-w\sin\theta\cos\theta+x\cos^2\theta)+j(y\cos^2\theta-z\sin\theta\cos\theta)\\ &+k(y\sin\theta\cos\theta+z\cos^2\theta)+i(w\sin\theta\cos\theta+x\sin^2\theta)\\ &+k(y\sin\theta\cos\theta-z\sin^2\theta)-j(y\sin^2\theta+z\sin\theta\cos\theta)\\ =&w(\cos^2\theta+\sin^2\theta)+ix(\cos^2\theta+\sin^2\theta)\\ &+j\{y(\cos^2\theta-\sin^2\theta)-z(2\sin\theta\cos\theta)\}\\ &+k\{y(2\sin\theta\cos\theta)+z(\cos^2\theta-\sin^2\theta)\}\\ =&w+ix+j(y\cos2\theta-z\sin2\theta)+k(y\sin2\theta+z\cos2\theta)\tag{8-2-4} } \]
最後は倍角の公式を使った。これで $ j-k $平面 だけを回せた!
めでたしめでたし。2倍回るけどw

こうなった
\begin{eqnarray} \left[ \begin{array}{c} w' \\ x' \\ y' \\ z' \\ \end{array} \right]=\left[ \begin{array}{cccc} 1 & 0 & 0 & 0\\ 0 & 1 & 0 & 0\\ 0 & 0 & \cos2\theta & -\sin2\theta\\ 0 & 0 & \sin2\theta & \cos2\theta\\ \end{array} \right] \left[ \begin{array}{c} w \\ x \\ y \\ z \\ \end{array} \right] \end{eqnarray}


・・・ハミルトン劇場 終


このあと第8講は

  • 【8-3】クォータニオン:定義と諸性質
  • 【8-4】クォータニオン:3次元回転の表現
  • 【8-5】 [▼]付録 1:一般的な4次元の回転について
  • 【8-6】付録2:成分表示における4次元内積の不変性について
  • 【8-7】 [▼A]付録 3:オイラーの公式と代数的補間式 について

と続きます・・・。

公開先

--- 【追記:2022-04-01】 ---

PDFファイルは以下のリンク先でも閲覧、ダウンロードできます。

f:id:sgtech:20220406024044p:plain

基礎線形代数講座20210615.pdf - Google ドライブ

--- 【追記ここまで】 ---

--- 【更新:2022-07-15】---

「基礎線形代数講座」は、開発技術部の技術資料一般公開先でもある、Speaker Deck サイトにて公開しています。

#技術資料一般公開先サイトを Speaker Deck に引っ越しました

--- 【更新ここまで】 ---

--- 各項目は以下のような内容となっています。

【第1講】イントロダクション

 【1-1】はじめに

 【1-2】数学導入:数の拡張

  [1-2-1] 自然数 ℕ:全てはここから

  [1-2-2] 整数 ℤ:0の発見、負の数の導入

  [1-2-3] 有理数 ℚ :分数・小数の導入

  [1-2-4] 実数 ℝ:無理数の導入

  [1-2-5] 複素数 ℂ:虚数の導入

  [1-2-6] まとめ

 【1-3】付録:ギリシャ文字一覧

【第2講】初等関数

 【2-1】はじめに

 【2-2】指数・対数関数

  [2-2-1] 指数関数の定義と性質

  [2-2-2] 対数関数の定義と性質

  [2-2-3] 自然対数と自然指数

  [2-2-4] 応用例

 【2-3】三角関数

  [2-3-1] 三角関数の定義と性質

  [2-3-2] 三角関数の主な公式

  [2-3-3] ド・モアブルの定理

  [2-3-4] 応用例

 【2-4】指数関数の別定義

 【2-5】[▼A] オイラーの公式

 【2-6】付録1:二項定理(二項展開)

 【2-7】付録2:総和記号

 【2-8】付録3:sinθ/θ→ 1 (θ→ 0) の証明

 【2-9】付録4:三角関数の各公式の証明

【第3講】ベクトル

 【3-1】はじめに

 【3-2】ベクトルがもつ性質

  [3-2-1] ベクトル自体がもつ性質

  [3-2-2] ベクトルの組がもつ性質

 【3-3】内積

  [3-3-1] 定義

  [3-3-2] 代数的性質

  [3-3-3] 幾何学的意味

 【3-4】抽象化されたベクトルの概念と例

 【3-5】外積

  [3-5-1] 定義

  [3-5-2] 代数的性質

  [3-5-3] 幾何学的意味

 【3-6】n本のベクトルが張るn次元体積

  [3-6-1] 2次元:2次元体積(面積)

  [3-6-2] 3次元:3次元体積(体積)

  [3-6-3] n次元:n次元体積

 【3-7】付録1:Levi-Civita記号

  [3-7-1] Levi-Civita記号 (3次の場合)

  [3-7-2] 拡張Levi-Civita記号 (n次の場合)

 【3-8】付録2:外積の公式の証明

 【3-9】付録3:置換と転倒数の偶奇性

【第4講】行列I:連立一次方程式

 【4-1】はじめに

 【4-2】掃き出し法

  [4-2-1] 連立一次方程式の加減法による解法

  [4-2-2] 掃き出し法と行基本変形

  [4-2-3] 不定解、解なしとなる場合

  [4-2-4] 連立一次方程式の違う見かた

 【4-3】行列式の導入

  [4-3-1] あらためて「関数」D(a,b,c) とは

  [4-3-2] 行列式の定義

  [4-3-3] 行列式の性質 I

 【4-4】行列の導入

  [4-3-1] 導入小話:もしかすると行列って・・・・

  [4-4-2] 行列と演算の定義

  [4-4-3] 行列の基本性質

  [4-4-4] 連立一次方程式の行列による表示

 【4-5】付録1:行列式の重要な性質

 【4-6】付録2:簡約行列の構造

 【4-7】付録3:補足説明

 【4-8】付録4:行列式の定義について

【第5講】行列II:線形変換

 【5-1】はじめに

 【5-2】線形変換(一次変換)

  [5-2-1] 線形変換の例

 【5-3】逆行列

  [5-3-1] 行列式の性質II:余因子展開と積の行列式

  [5-3-2] 逆行列の定義と余因子行列による表示

  [5-3-3] 正則行列/逆行列の性質

 【5-4】直交行列

  [5-4-1] 転置行列の性質

  [5-4-2] 直交行列の定義と性質

 【5-5】線形変換の行列による表示

  [5-5-1] この節のねらい

  [5-5-2] 必要な諸定義

  [5-5-2] ベクトルの列ベクトルによる表示

  [5-5-3] ベクトルの組の行列による表示

  [5-5-4] 線形変換の行列による表示

  [5-5-5] 基底の変換と座標変換

  [5-5-6] 線形変換に対する基底の変換と表示行列の変換

  [5-5-7] 線形変換と座標変換(ActiveとPassive)

  [5-5-8] 合成変換の行列による表示

 【5-6】[▼C]付録1:Levi-Civita記号の積の性質

 【5-7】付録2:複素数の行列による表現

【第6講】行列III:固有値・対角化

 【6-1】はじめに

 【6-2】固有ベクトルと固有値

  [6-2-1] 線形変換の点の「向きの流れ」

  [6-2-2] 固有ベクトル・固有値と固有方程式

 【6-3】行列の対角化

  [6-3-1] 線形独立な固有ベクトルへの基底の変換

  [6-3-2] 対角化可能な条件

  [6-3-3] 相似変換

  [6-3-4] 行列の三角化

  [6-3-5] 固有値の諸性質

 【6-4】実対称行列の対角化

  [6-4-1] 実対称行列の固有値・固有ベクトル

  [6-4-2] グラム・シュミットの正規直交化法

  [6-4-3] 実対称行列の対角化

  [6-4-4] 実二次形式

 【6-5】応用例

  [6-5-1] 剛体回転におけるオイラーの定理

  [6-5-2] 漸化式と特性方程式

  [6-5-3] [▼B] フーリエ級数展開

  [6-5-4] 行列指数関数

 【6-6】付録1:複素ベクトル空間・行列について

 【6-7】付録2:各証明

 【6-8】[▼A]付録3:オイラーの公式の行列表現

【第7講】回転の表現I

 【7-1】はじめに

 【7-2】回転行列

  [7-2-1] 考察の定式化

  [7-2-2] 表示行列としての回転行列

 【7-3】オイラー角と仲間たち

  [7-3-1] 回転後の基底の姿勢を3つの回転角で表す

  [7-3-2] オイラー角

  [7-3-3] Tait-Bryan角

  [7-3-4] ジンバルロック

 【7-4】回転ベクトル

  [7-4-1] 定義とロドリゲスの回転公式

  [7-4-2] 回転行列による表示

  [7-4-3] 回転行列の固有値・固有ベクトル

  [7-4-4] 3次元回転の大域的な構造

 【7-5】付録1:回転変換に関する2証明

 【7-6】[▼A,C]付録2:3次回転行列となる行列指数関数

【第8講】回転の表現II

 【8-1】はじめに

 【8-2】クォータニオンの導入:ハミルトン劇場

  [8-2-1] 拡張複素数で複素(3次元)空間を回したい

  [8-2-2] 4次元? マジか4次元??

 【8-3】クォータニオン:定義と諸性質

  [8-3-1] 定義

  [8-3-2] スカラー+ベクトル表記

  [8-3-3] ベクトル部の性質

  [8-3-4] ノルム・逆元と積の性質

  [8-3-5] 単位クォータニオンと極形式

  [8-3-6] 4次元ベクトルとしての内積

 【8-4】クォータニオン:3次元回転の表現

  [8-4-1] 任意軸まわりの回転

  [8-4-2] 3次元回転の合成

  [8-4-3] 回転行列による表示

  [8-4-4] 単位クォータニオンのパラメータ領域

  [8-4-5] 球面線形補間

 【8-5】[▼]付録1:一般的な4次元の回転について

 【8-6】付録2:成分表示における4次元内積の不変性について

 【8-7】[▼A]付録3:オイラーの公式と代数的補間式について

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セガでは共に技術力を高め合い研鑽していける方を募集しています。 興味がある方は下記サイトにアクセスして下さい。

recruit.sega.jp

*1:あくまで筆者の想像(妄想)による過程であり、史実に基づいたものではありません。

*2:詳細は第5講 付録2参照

*3:くどいですが、筆者による想像(妄想)です

*4: $ 𝑖\times 𝑖𝑗=𝑖^2𝑗=−𝑗 $ ってこと

*5:運河を渡る橋に $ 𝑖^2=𝑗^2=𝑘^2=𝑖𝑗𝑘=−1 $ と刻んだとの事

*6:ちなみに 4次元では 2本の直交する基底で張られる (回転 )面を、基底を共有せずに 2面とることが できる( 3次元ではできない)。この場合 $ 1−𝑖 $平面 と $ 𝑗−𝑘 $平面 は原点のみで交わっている事に注意。

*7:ハミルトン卿ご自身は、この積の非可換性(当時初?)あまりお気に召さなかったらしい

アーケードゲームを支えるデバッグ術

ブログ読者のみなさん、はじめまして。
株式会社セガのベテランプログラマー阿部です。

このエントリーではデバッグ手法のあれこれについての体験談と、デバッグをテーマに一昨年に実施されたプログラマー向け新人研修の概要をお伝えしたいと思います。

EXE ファイルのデバッグ

同僚が作った EXE ファイルが手元にあり、あなたはこれを Windows で起動しようとしています。
起動してみたところ何も反応がなく、しかもそれは想定外のことでした。
「何コレ、動かないんだけど」とあなたが同僚に文句を伝えると、同僚はあなたに返します。
「こっちでは動いてるよ」

 

困りましたね。
あなたの手元には EXE のソースコードも無ければ、Visual Studio もありません。
こんな時、どうするのが正解でしょうか?

実はこんな状況でもやれる事がいくつかあるんです。
わたしなら プロセスのメモリダンプ を取って、同僚に渡します。

 


プロセスダンプがあれば、同僚はプログラムがどこまで進んだのかを Visual Studio で把握することができるようになるのです。
プロセスダンプの取得は ツール不要で Windows デスクトップから操作可能 なので、この方法は一番気軽に試せることでしょう。

 

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プロセスダンプの取得

あるいはその前に Sysinternals Suite に含まれる DebugView の出力を確認してみると、プログラムに埋め込まれた OutputDebugString() から 何らかの手掛かりが得られるかもしれません。
もし EXE ファイルと PDB ファイルが揃っていて 別の PC 開発環境があるなら、イーサネット経由でリモートデバッガをアタッチしても良いでしょう。
PDB ファイルが無いとしても 仮に EXE が .NET アセンブリなのであれば、ILSpy などの逆アセンブラーが使えるかもしれません。

 

こういう知識は「持っているかどうか」がとても重要 で、仕事の速いプログラマーほど よりたくさんの手段を自然と身に着けているような気がしています。
社内には SYS ファイル(デバイスドライバー)をデバッグできるプログラマーとかもいて、もうリスペクトしかないです。

イーサネット絡みのデバッグ

ネットワーク上のゲームサーバーと通信するクライアントプログラムを書いて、これをアーケードゲーム機で起動させたとします。
ゲームサーバーとの通信が「たまに成功しないことがある」という場合は、どうデバッグしたら良いのでしようか?

近年のアーケードゲーム機は PC アーキテクチャーをベースに設計されることも多く、セガでも Windows を搭載した機種が多数リリースされています。
コピーガードやリバースエンジニアリング防止を目的として、多くのアーケードゲーム機ではデスクトップ画面を開くことはできず、ネットワーク経由でのログインやプロセスへのアタッチもできません(外界からは ロックダウン されています)。

 

「たまに失敗」という場合は、ソースコードレビューで判明するバグがあるとは考えにくいです。
そこでわたしなら、 イーサネットを流れるイーサフレームを Wireshark でパケットキャプチャーする ことから始めてみます。

 

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フレームの測定


イーサネットを観測することで、最初にまず以下を見極められると期待しています。

  • ケース1: 想定通りにパケットが流れていない(送信失敗)
  • ケース2: 想定外のパケットが流れている
  • ケース3: 想定通りのパケットが流れている(送信成功)

その結果、クライアントのコードが悪いのか、OS 側スタックのネットワーク設定が悪いのか、上流のネットワークが悪いのかを絞り込める、という算段です。

 

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問題を切り分ける


なお 「上流のネットワークが悪い」という結果だった場合は、キャプチャーの測定範囲を変更して 問題の機器を特定 していきます。
過去には、全国ゲームセンターにあるルーターが原因ということもありました。

ルーターが IP パケットのチェックサムを再計算するときに、特定条件下で計算ミスが起こるため、
ルーターのさらに上位にあるネットワーク機器でパケットがドロップされていた

というもので、本来ならばルーターファームウェアを修正し更新版を配信することになります。

 

通信エラーだけではありません。
TCP 通信において 「スループットが足りない」という場合、ここでもパケットキャプチャーから始めるのは良い選択の1つ です。
測定結果から、次に挙げるような点検箇所がいくつか見つかることでしょう。

  • SYN パケットに時間が掛かっている
    → コネクションプールを導入するか、セッションクローズしないプロトコルを採用する
  • リクエストからレスポンスまでの間隔が圧倒的に長い
    → サーバー処理でスワップアウトやスロークエリが発生していないか確認する

周辺機器絡みのデバッグ

広く使われている キャラクター表示器 は、シリアルポートから送信されたアスキー文字や SJIS をドットマトリクスとして表示してくれます。

 

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キャラクター表示器(VFD)

ある日「キャラクター表示器の表示がおかしい」という報告をもらって現地確認に行くと、見慣れない文字列が確かに表示されていました。
プログラムから制御しているというのに、 プログラム内に存在しない文字列が表示されてしまうのはおかしい ですね。
この表示器を含めて、多くは RS232C という低速でレガシーなシリアルポートを使って接続しています。
RS232C 通信は物理層での冗長性に乏しいため、ひょっとすると外的要因でポートに電気的なノイズが乗ってしまい、パケットが化けてしまったのかもしれません。

 

ということで早速 RS232C を測定しました。
RS232C の測定には ロジックアナライザーという測定機器を使います 。
RS232C 接続を構成するラインをプローブすれば、各ラインの Hi/Lo をタイミングチャートとして確認できるようになります。

 

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研修で使用した ZEROPLUS 製 ロジックアナライザー

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測定結果のタイミングチャート

実際測定してみると、タイミングチャート上はプログラムからの出力がそのまま反映されており、異常な部分は見つかりませんでした(結局その後の調査で 別の原因が見付かりました)。

 

同じ手法は USB 機器にも使えます。
USB 機器の場合は USB 対応のプロトコルアナライザーを導入することもできます(実は USBPcap + Wireshark という別の選択肢もあります)。

ゲームセンターに設置されるアーケードゲームは、ゲームパッドに縛られない、多彩なユーザーインターフェースが特徴の1つになっています。
さらにユーザーインターフェースだけでなく、キャビネット上の電飾や可動部のモーターなど さまざまな周辺機器がつながっており、それらをすべてプログラムで制御しています。
そういった周辺機器としては、既製品を採用することもあれば、新規に設計することもあります。
ここにもデバッグの機会が大いにあります。

デバッグスキルブートキャンプ

ここまでいくつか紹介したように、「プログラムのデバッグに使えるもの」にはツール(ソフトウェア)だけでなく、測定機器(ハードウェア)も重要な一端を担っていることが理解いただけたかと思います。
また大学や専門学校などで 「プログラミングをマスターする機会」はあっても、「デバッグをマスターする機会」は無いのが実情 です。

わたしが所属する技術本部では、これらの背景を踏まえてプログラマー向け新人研修が実施されました。
デバッグスキルにフォーカスしたハンズオン研修、題して「デバッグスキルブートキャンプ」です。

学生時代に触れる機会が少ないであろう測定機器にも触れながら バグを正しく観測する技術 を習得し、 printf デバッグ だけでは決して成し得ない、バグの根本原因に辿り着く 貴重な体験を重視としたカリキュラム になっています。

 

開催形態は以下の通り。
他の新人研修とは異なり、新人プログラマーが実務に少し馴染んだ年末年始に開催されています。

  • ハンズオン重視: 当日フラっとやってきて学べればよい
  • 予習・宿題は原則ナシ: 「座学 20min、ハンズオン 75min」とか「座学 10min、ハンズオン 45min」とか
  • 開催時期はプロジェクト配属後6か月後から
  • 開催ペースは毎週1回、計9回(9ネタ)ほど

 

本来なら社内に広く展開して必修化した方が社員みんなの為になるのですが、測定機材の都合もあって一部組織内での開催にとどまっているのが現状のようです。
各回資料は社内公開されていますが、そのうち一冊の本に体系化されたらイイなと密かに期待しています。


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黒子に徹する、裏方系エンジニア

デバッグの世界とデバッグスキルブートキャンプについて紹介しました。
最後にわたしが所属する技術本部について紹介します。

技術本部にはいろいろなキャリアの開発者が在籍しており、 ゲーム体験・感動体験を下支えする何か を日々開発しています。
わたし自身を例に挙げると 以下のような感じです。

  • ゲームを開発するためのライブラリを作ったり
  • コンバーターとか自動化ツールを作ったり
  • Windows Embedded を使いこなして、アーケードゲーム機向けの OS をビルドしたり
  • 開発者向けグループウェアを管理したり

近隣のデスクには ちょっと違う種類の仕事をしている人がいますね。

  • データベースとか VM をいじる人
  • 基板回路を設計する人
  • Maya 上のメッシュモデルをあれこれする人
  • ルーターとか「目新しいユーザーインターフェースデバイス」をいじめる人(w)など

千人規模の社内開発者を支える技術本部にはいろいろな仕事があって、それぞれに奥が深そうです。
そして ゲーム自体のおもしろさを追求するのとは違った立ち位置で、ゲーム周辺にある様々な問題を解決 しています。

 

わたしもゲーム開発を後押しする裏方系エンジニアに転身したことで、結果的にはいろいろなテクノロジースキルを身に着けることができました。
「開発したゲームで世界をあっと言わせる!」という部分に自信を持てなくても、「技術のことなら何でも任せて!」という自信に満ちたプログラマー/ソフトウェアエンジニアなら、セガでキャリアを積むのも悪くないと思いますよ。

ということで、現場で成長をつづけながら「縁の下の力持ち」として共に働ける仲間を求めています。

 

recruit.sega.jp


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ペルソナ5 ザ・ロイヤルの開発中、自動プレイでバグを検出してみた話

ごあいさつ

初めまして、株式会社アトラスのプログラマー埜渡です。
Tech BLOGにお邪魔させていただきます。

今回は、弊社のタイトル「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」(P5R)の開発中に、自動プレイを実装してバグの検出を行った経緯とその結果についてのお話をさせていただきます。
ゲーム本編の実装についてのノウハウというよりは、デバッグ作業での工夫についての内容になります。

ただ、触れる内容といたしましてはP5Rのゲームの中身に関する事が多いため、未プレイの方はプレイしてから読んでいただけると、より理解が深められると思います。

p5r.jp 

自動プレイ実装のきっかけ

自分が入社した頃の一昔前のバグの検出といえば(現象発生時の記録を残すために)開発機をビデオデッキに繋ぎながらプレイをして、発見したら詳細な手順をバグシート(紙)に書いて報告をしているような方法でした。

最近では開発環境自体に録画機能が備えてあったり、バグ報告もWebベースでチケット管理したりとだいぶ環境が変わってきました。

報告方法が変わってきただけでなく、検出方法も人が何時間も粘ってプレイして出す方法から、機械的にテストできるものは自動化をするような動きに変わってきています。

弊社タイトルのP5Rは平均プレイ時間がおよそ100時間ほどとなっており、勤勉に日々の業務時間フルにプレイしても、クリアまでに3週間近くかかってしまう計算になります。

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そんなことも背景にあったため、なんとかして少しでもプレイして確認する時間を増やしたい、できればエンディングまで通しで確認できる仕組みを作りたいという考えから人手を介さずともゲーム本編のテストをしてくれるような自動プレイを実装しようと思い立ちました。

自動プレイを実装するにあたって

自動プレイを実装するにあたって、いくつか問題となる事がありました。

  1. 専用の作業時間を用意していなかったため、他の人に作業をお願いはできない
  2. 同様の理由で自動プレイ自体の調整・修正作業に多くの時間は費やせない

1.についてですが、例えばプランナーやデザイナーに自動プレイ用に何かを対応作業をしてほしいというお願いをしようにも、そもそもの担当箇所の実装や調整作業で手一杯なため、追加の作業はお願いできないという状況にありました。

2.についても、自分自身が日常・ダンジョンパート(プレイヤーを操作して自由に移動するパート)という担当箇所を持っていたため、自動プレイの実装をした後にプランナーやデザイナーの仕様変更に合わせた調整をするための時間が十分にあるわけではありませんでした。

 

そんな事もあり、実装する仕組みとしては

  • データ作成の時間が無いため、自動プレイのための専用データはなるべく用意しない
  • 細かい対応する時間が無いため、仕様変更や調整に対応できるような仕組みでの実装を試みる

このようなコンセプトを持って、自動プレイの実装作業を開始しました。

また、実装の目標として

  • 人手を介さずとも、ゲーム開始からエンディングまで自動でプレイできる
  • ランダム要素を増やしなるべく多くの箇所をチェックできるようにする

こちらを達成できるようなものを目指し作成を開始しました。

実装してみたもの

実装内容の説明の前にゲームのシステムを軽く説明させていただきます。

ペルソナシリーズの特徴的なシステムとして、カレンダーシステムがあります。

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カレンダーシステム

こちらはゲーム内1年間の日々を過ごす事でゲームが進行していく仕組みになっています。
極端な話ですと、毎日家に帰って寝るだけの自堕落な生活をしていてもエンディングへ近づく事はできます

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果報は寝て待つ

・・・が、流石にそれだけでゲームが進行するはずもなく、一定期間にダンジョンをクリアしてボスを倒すようなことはゲームクリアするために必要となります。
また、ただ寝るだけの生活ではバグの検出としては不十分なのでなるべく色々なイベントを発生させるようにもしたいという考えがありました。そのためには自室のベットへまっしぐら・・・ではなく様々な場所へ移動するための仕組みが必要となります。

 ここで問題となったのが、どのようにしてプレイヤーキャラを目的地に移動させてゲームを進行させていくかです。

ゲームを進行させるというのは、ダンジョンパートであればギミックを解除しボスの元までたどり着く、日常パートであればNPCに話しかけてイベントを発生させたり、バッティングセンターに通ったりすることになります。
こういったイベントをこなしていくことで、ゲームオーバーになることなく日付が進行しエンディングを迎えることができます。

次に目的地へ移動する仕組みについてですが、真っ先に思いたものは人がプレイしたデータをリプレイまたはそのような操作をツール上で指定するといったものでした。
ただ、今回は先の「データ作成の時間が無いため、自動プレイのための専用データはなるべく用意しない」という事情もあり、実装することはできませんでした。

そのため専用データを必要としない、ルールベースの移動システムを実装することにしました。

ルールベースの実装基本方針として、付近のイベントヒットを探索し起動するという仕組みを実装しました。

ここでいうイベントヒットとは、ゲーム中アクセスすることでイベントが発生するような範囲のことを指します。

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イベントヒット例
  • NPCとのTalkヒット
  • 宝箱や扉のCheckヒット
  • エリア移動を行うGotoヒット
  • …etc

こちらを目標地点として移動することで、闇雲に移動するのではなく先述のゲームを進行させるイベントを発生するために移動することができます。

本実装ではプレイヤーキャラクターの前方範囲を中心に、直線距離で障害物に阻まれることなくたどり着けるものをランダムで検索しそちらを目標地点として移動させました。(画面写真プレイヤー前方の扇形範囲)

f:id:sgtech:20200918095449p:plain

イベントヒット探索

ただ、こちらだけでは付近にイベントヒットがない場合には移動に困ったためもう一つのルールを実装しました。

 もう一つのルールはヒートマップ(時限制の徘徊履歴)になります。(画面写真の赤いラインのブロック)

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ヒートマップ

歩き回ったプレイヤーの周囲(本作では100cm立方のブロック)に時間経過でクリアされる徘徊履歴をつけることで、ヒートマップがない場所=(少なくとも直近では)あるきまわっていない場所というルールができました。

こちらのルールを追加することで、イベントヒットが検索で見つからなかった場合には、付近のヒートマップが配置されていない場所(ブロック)を移動目標にすることで、未踏破部分を目指して歩き回ることができるようになりました。 

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自動プレイの移動例

蛇行した通路でも引っかかることなく、ヒートマップの存在しない未踏破部分へ移動し、イベントヒットを見つけた際には移動して調べる動作をしていることがわかると思います。

未踏破部分には今まで調べたことのないイベントヒットがある可能性が高く、そちらのイベントヒットにアクセスすることで、新たな未踏破エリアが増え、さらなる未踏破部分へと移動というループができ、より広く、より先の範囲を自動で移動できるようになりました。

 その他にも細かい調整はしたものの、大きくは先の2つの移動ルールでエリア内の未踏破部分を歩き回り、発見したイベントヒットを調べることができたため最終的にはダンジョンのボスまで到達することができました。

これまでの仕組みを実装したことで、日常パートではダンジョン最奥部のような目指す目的地は無いものの、同様のルールで様々なNPCや施設にアクセスするため、各種イベントを発生することができるようになりました。

ここまで実装できれば、プレイヤーキャラの移動箇所以外(バトルパートやイベントパートなど)はランダム入力でもなんとかゲームが進行ができ、最終的にはエンディングへ到達することができるようになりました

自動プレイで目的地として使用しているイベントヒットは、ゲーム内で使用するためのデータだったため追加のデータを必要とすることが(ほとんど)なく、ゲーム本編での調整による修正にも強いものとして実装することができました。

そのため開発中盤~マスターの直前あたりからは手の空いた筐体(退社時など)を利用して自動プレイを回すようにしていましたが、各種の調整作業が有ったとしても自動プレイ自体の調整は殆どせずに稼働させておくことができました。

運用した結果

今回実装した自動プレイでは、主にハングアップや進行不能となるような不具合の検出に重点を置いてチェックを行いました。

その結果として、上記のような最重要修正ランクバグの報告数のうち5%程は自動プレイで検出することができました
割合としてはちょっと少ないかなという印象かもしれませんが、こちらはバグチケットとして記録が残っているものに限っているため、報告が残っていない開発中盤時から発見できた不具合などを含めるともう少し多い割合貢献できていたと思います。

また自動プレイで検出できたバグは、人手で再現するのが難しいようなタイミングや方法でのものが多く、こちらが予想できないようなバグを発見することができたのも大きな収穫となりました。

  • バトルの特定タイミングでラッシュをすると進行不能
  • システムセーブ中にデータロードでハングアップ
  • 特定の手順とタイミングでペルソナ合体を行うとハングアップ
  • etc...

開発中盤から1台は自動プレイ用に常に稼働していた筐体がありましたが、そちらはほぼほぼ24時間フル稼働させていた結果、マスターアップ時点の累積プレイ時間は2000時間を超えるものとなっていました。(およそ250人日分の働き!!)

まとめ

今回の自動プレイの実装では、専用のデータを殆ど用意せずゲーム本編の調整があっても自動プレイの調整を行うことはあまりしないで済む方法として実装できました。

実装方法としてメリットが多いように思えるかもしれませんが、もちろんデメリットもありました。

  • ランダムでアクセスするためすべてのチェックを網羅できているわけではない
  • 同様の理由としてランダム操作が多く、複雑な条件のチェックができていない
  • キャラクターの移動効率は良くないため1周あたり300時間かかってしまった

これらは実際に運用してみて、今回の問題点・反省点と感じました。

 

今後の課題として、これらの問題を解消しより効率よく細部までのチェックを行える仕組みを考えていきたいと思っています。

 

アトラスではこのような取り組みに興味のある方を募集しています。もしご興味を持たれましたら下記サイトにアクセスしてみてください。

 

www.atlus.co.jp

 

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