■ 共闘ことばRPG 「コトダマン」
こんにちは。
セガゲームス 開発統括部 アート&デザイン部 TAセクション 廣田です。
今春リリースの「共闘ことばRPG コトダマン」では全てのキャラクターアニメーション(700キャラ以上!)をAnima2D で作成しました。タイトルリリース前ですが、一足先にコトダマンのキャラクターを使って、Anima2D のセットアップからアニメーション作成を解説していきます。
さらに次回、Anima2Dでの制作をサポートするスクリプトについても書いていく予定です。
公式
好評配信中です!
kotodaman.sega.jp
この記事で紹介しているキャラクターは、全てコトダマンのAnima2Dキャラクターです。
Twitterでは他のキャラクターもたくさん登場していますので、Anima2Dのサンプルとして是非ご覧ください!
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■Anima2D とは
将来的に Unity への組み込みを予定しているようです。
これを利用することで、Unity 内で 2D ボーンアニメーションができるようになります。
3DCGツールを使っている方なら、板ポリゴンにテクスチャーを貼り、ボーンを入れて2D イラストを動かすという工程がUnity内でできるようになったと思ってもらうと分かりやすいでしょう。
ドキュメント
上記画像にある、DocumentationというリンクからPDFをダウンロードできます(英語)
■Anima2D のメリット
- FCurve エディタが使用できる(MayaやSoftimageで慣れたアニメーターの作業・修正スピードが格段に違う)
- Unity のスクリプティングによる拡張ができる(セットアップの自動化や機能追加・作業支援ツールの作成など)
- Unity 内で作業できるので、他ツールからのエクスポート/インポートの手間が無い。
- メッシュをある程度自動で切ってくれる
- 学習コストが安い(Unityを触ったことがある+3DCGツールでアニメーションを作成した事があればすぐ)
- ゲーム画面内で見ながら作成・修正できる。(Shuriken のエフェクトも同時に作成可能)
- Unityの公式アセットになった。
コトダマンでは700キャラ以上のアニメーションを作るにあたり、Spine, Live2Dも検討したのですが、上記理由でAnima2Dを採用しました(数字は選択理由順)。
簡潔に言うと「作業スピード+スクリプティングによるカスタマイズ」が選択理由です。
■Anima2Dのデメリット
この場合は違うツールを選択した方が良いです。
- Unity 以外で開発を行う可能性がある(Cocos2D など)
- フリーフォームデフォーメーション(頂点を動かしての細かいアニメーション)を行う
フリーフォームでフォーメーションをやるかどうかが一番の判断基準ですが、作り方によっては、コトダマンのように魅力的に動かせますよ!
■Anima2D を準備する
では、さっそく始めてみましょう。
まずは、アセットストアから「Anima2D」で検索してダウンロードします。
後述する Skinned Mesh Combiner(複数のキャラパーツを1ドローにまとめてくれるスクリプト)が入っているので、Examples も含めてインポートを行っておきましょう。
(最低限でも、Examples/Scriptsのみはインポートしてください)
■全体の流れ
イラスト → パーツ分け → パーツ配置 → ボーン配置 → ウエイト付け → アニメーション作成 → 描画最適化
という流れで進みます。
■イラストの準備(パーツ分け)
Anima2Dで動かすために、キャラクターのパーツ分けを行います。
コツ
- まずはキャラクターがどう動くのか、アニメーションを決定しましょう。ここをきちんと計画しておかないと、アニメーションを作り始めてから、パーツが分かれていなくて動かせない!などの問題が出てきます。
- それでも、どう動かすかが決めきれない場合は、基本的に関節単位で分割します。
- Photoshop上でCtrl+Tでパーツを回転させて、パーツの割り具合と動きを確認してみましょう。隙間が見える場合は塗り足すか、それをカバーするような動きに変更します。
- 上腕・下腕・手、足などはパーツを分けておいた方が破綻せず、動きも大胆に作れるようになるので、分けておくのをオススメします。
Photoshopデータの作り方
- パーツを切り分ける。1 パーツ 1 レイヤー。
- 英数字でレイヤー名を付ける
- パーツの書き出し。1パーツ1画像(.png)
後でこのルールを元に、Unity取り込みまでを自動化するスクリプトを作成します。
■Unityへの取り込み
1枚のテクスチャーに収める
TexturePackerやSpriteUVなどを使って、1枚のテクスチャーにパーツを配置します。
マルチスプライトに設定
- テクスチャーをUnityに読み込んだら、SpriteModeをMultipleに設定します。
- 必要があれば、Sprite Editor ボタンを押して、スプライトを切り直します。
Anima2D SpriteMesh に変換
- テクスチャーを右クリック → Create → Anima2D → SpriteMesh でAnima2DのSpriteMeshを作成します。
- テクスチャーファイルを選んで実行すると、まとめてSpriteMeshが生成されます
- マルチスプライトの各要素(青い四角アイコン)を選んで、同じようにCreate → Anima2D → SpriteMeshとすれば、1個単位でSpriteMeshを生成されます。SpriteEditorで後からスプライトを追加した場合など、単品でSpriteMeshを作る事ができます。
■Unity階層の準備
まず、メッシュとボーンを配置するための階層構造を準備しましょう。
GameObject -> Create Emptyで画像のような階層を組みます。
character → キャラクタートップ階層(全体に関するスクリプトはここに付けます)
/mesh → メッシュを置きます
/bone → ボーンを置きます
■パーツ(SpriteMesh)を並べる
配置テンプレート(下敷き)の準備
キャラクターの1枚画像を下敷きとして用意し、これをガイドにパーツを配置していきます。
- キャラの全身画像を用意し、Sprite(2D)に設定します。
- Hierarchy上にtemplate画像を置き、InspectorでColorのAlphaを半透明に設定し、配置ガイドにします。
- そして・・・頑張ってSpriteMeshを並べていきます!
パーツの前後関係の設定(Order in Layer)
Order in Layerでパーツの前後関係を設定します。数字が大きい方が前面に描画されます。
- 分かりやすいように、Hierarchy上でPhotoshopと同じ順に並べます。
- Order in Layerを下から順に番号を振っていきます。
この項目の工程は非常に面倒なので、後でスクリプトで自動化します!
■ボーンの配置と設定
配置
計画したアニメーションに合わせて、配置したパーツの上にボーンを並べていきます。
- Hierarchy上で右クリックし、CreateObject→2D Object → Bone でボーンを出します。(またはAlt+Shift+B)
- ボーンの根本を掴むと移動、先の方を選ぶと回転ができます
- Transform, Rotationツールを切り替える必要はありません。
親子階層の設定
配置が終わったらHierarchy上で親子関係を組み立てます。
boneの設定
Hierarchy上での親子関係とは別に、bone自体にChildという設定項目があります。
Anima2Dが計算する時に使うボーンの親子情報です。
- IKで動かす場合は、必ず設定します。
- 子階層に向かって、ボーンの向きと長さが自動で設定されるようになります。腕・脚など、関節部分は見た目が分かりやすくなります。
Colorの項目でボーンに色を設定できます。
自分で分かりやすい色に設定しましょう。
Color | ボーンカラー。見た目の変更。 |
---|---|
Child | 子ボーン。IKを使うなら設定必須。 |
Length | ボーンの長さ。Childが設定されていると自動計算されます。 |
コツ
- 階層構造は最後に組みましょう。
- 骨の配置時に階層構造も組みたくなるのですが、先にやってしまうと親の骨を動かした時に、子の位置もずれてしまうので、手戻りが発生します。
■メッシュにボーンを割り当てる
メッシュを選んで、対応するボーンを設定します。
- メッシュを選択
- Bonesの右下の「+」を、割り当てたい骨の数だけ押します。
- 出てきた空欄に、ドラッグ&ドロップでボーンを割り当てます
- (まだメッシュにバインドしていないため警告が出ますが、今は大丈夫です)
- 階層をまとめて割り当てたい場合は、SetBonesにドラッグ&ドロップすれば、子階層まで一気に設定してくれます。
■メッシュ割り
メッシュはボーンに合わせて割ると綺麗に曲がりますので、ボーン配置後にメッシュ割りをします。
SpriteMesh Editor
Anima2D用のメッシュ割り&ウエイト付を行うエディタです。
Unity上部メニュー → Window → Anima2D → SpriteMeshEditor で表示します。
Sliceツールの利用
左上のSliceボタンを押すと、メッシュを自動で割ってくれます。
Outline Detail | 画像形状をどれだけ正しく追跡するか。値を上げると画像に沿ってメッシュが切られますが、頂点数が多くなります。 |
---|---|
Alpha cutout | メッシュを切る時のアルファの許容値。値を上げるほど画像の輪郭に近いメッシュが切られます。OutlineDetailの値が高くないとあまり効果はありません。 |
Tessellation | メッシュの中を分割するか。画像の輪郭だけでなく、内部にも頂点が生成されます |
Detect Holes | ドーナツのような穴の空いた画像部分のメッシュをくり抜くか。 |
画像は自動で生成されたメッシュです。
手間を掛けたくない場合は、決め打ちパラメーターでもある程度の結果にはなりますが、Sliceのスライダーを動かし、自動で割ってから手で調整するのが楽でしょう。
手動でのメッシュの調整
頂点の追加 | Shift+クリック |
---|---|
頂点の削除 | Del |
■ウエイトの設定
Bindボタンを押すと、メッシュに骨がバインドされ、自動的にウエイトが割り振られます。
ウインドウ下にWeightTool, Inspectorが出てきますので、これらのツールを使ってウエイトを調整していきます。
- 頂点を選択(Ctrlを押しながらで複数選択可)
- ウエイトを割り振りたい骨を選択
- Weight Toolのスライダーでウエイトの割合を設定する
Weight tool(SpriteMeshEditor:右下)
Overlay | メッシュ上にウエイトカラーを表示します |
---|---|
Pies | 各頂点上にウエイトの割合を表示します |
Smooth | ウエイト分配をスムーズ化します。選択した頂点だけにも掛けられます |
Auto | 自動でウエイトを割り振ります。選択した頂点だけにも掛けられます |
Inspector(SpriteMeshEditor:左下)
SpriteMeshEditorで選択したものの情報が表示されます。
画像は頂点を選択した場合です。
選択頂点に割り当てられている、ボーンとウエイトの確認・調整ができます。
コツ
- ウエイトを付けた後に、バインドしたまま、頂点の追加と削除ができます。
- 後から足した頂点にはウエイトが割り振られていませんので(黒い点)、Autoボタンなどで忘れずにウエイト設定しましょう。
- Unbindすると、設定したウエイトが初期化されてしまいます! 骨位置が違うと思ったら、早めにUnbindして骨位置を調整しましょう。ここはAnima2Dで改善して欲しい所です。
■リギング
IKの設定
- 先端の骨を右クリック→2D Object→IK Limb(IK CCD2D) を選択して、IKコントローラーを出します。
- グリーンの円がIKコントローラーです。
IK Limb(2ボーンIK)
腕・脚など2本の骨を制御する時に使用します。
Record | IKコントローラーを動かした時に、ボーン側にキーを打ってくれます。実機上でIKの計算コストを掛けたくない時はONにしてアニメーションを作成します。 |
---|---|
Target | IKでコントロールされる骨。自動設定されます。 |
Restore Default Pose | 計算を実行する前に初期ポーズを設定する。基本ON(現状ON以外の使い道が分かりません) |
Flip | 関節の曲がり方を反転。IK設定後に関節が逆に曲がってしまうならONにします。 |
Orient Child | IKでコントロールされているボーンより、下階層にあるボーンの角度をどうするか。ON:IKコントローラーと同じ角度にする。OFF:階層の角度を維持する。 |
IK CCD2D(多関節IK)
尻尾などの長い関節の制御に使用します。
Num Bones | 多関節IKでコントロールするボーン数。自動設定されます。 |
---|---|
Iterations | 計算回数。大きいほど多関節ボーンがIKコントローラーを正しく追跡しますが、計算負荷が大きくなります。モバイルではデフォルトの10を基準とし、様子を見て値を下げましょう。 |
Damping | 多関節ボーンの柔らかさ。1に近いほど固くなります。 |
Limb, CCD2Dの挙動の違い
IKによくある現象として、IKコントローラーとボーンが離れた時に、伸び切りが発生します。
伸び切った所から、再びIKコントローラーに接触すると、カクッとした動きになり非常に目立ちますが、
イラストを大胆に動かすと、どうしても伸び切り・カクつきが回避できない場合があります。
その場合は、2ボーンでもCCD2Dを使ってコントロールすると緩和されます。
Limbに比べて計算コストは高くなりますが、Iterationsの値(デフォルト10)を上げなければ、実機上でも問題ありません。
コントローラーの追加
ボーンに直接アニメーションを付けず、別階層でリグを組む時はコントローラーを利用します。
- ボーンを右クリック → 2D Object → Controlでコントローラーを出します。
- ボーンはコントローラーのTransformに追従するようになります。
■ポーズマネージャー
定型ポーズの保存・読み込みができます。
ポーズライブラリや、同じ骨構造で違うキャラを作る場合など、色々活用できます。
Poseファイルの準備
- Projectウインドウで右クリック → Create → Anima2D → Pose でポーズファイルを作成
コンポーネントのアタッチ
- bone階層にPoseManagerコンポーネントをアタッチ。
- 「+」ボタンを押してPoseファイルを設定
- 必要なポーズ数分繰り返します。
保存/読込
- Save/Loadボタンで、ポーズの保存・読込ができます。
コツ
- PoseManagerは、付いている階層以下のゲームオブジェクトのTransformを記録します。キャラクターの一番トップ階層につけてしまうと、メッシュの位置も記録されてしまい、違うキャラクター間でアニメーションを使いまわせなくなります。
- アニメーションエディタをレコードにした状態で、PoseManagerのLoadボタンを押せば、ポーズがロードされて、自動的にキーが打たれます。モーションの開始/終了時に基本待機ポーズに戻す時などに使えます。
- セットアップ中やアニメーション中に、デフォルトポーズに戻せるように、初期ポーズを登録しておくと良いでしょう。
■アニメーション作成
Animation, Mecanimを準備
ここはUnity通常のフローなので、簡単に書きます。
- Character階層を選択し、Animatorコンポーネントを付ける
- Projectウインドウで右クリック→Create→Animator Controller。Animatorコンポーネントに設定。
- Projectウインドウで右クリック→Create→Animation。
- Animatorウインドウで右クリック → Create State → Empty。出てきたステートに、上のAnimationを設定。
- Animationウインドウを開き(Ctrl+6)、ボーンを動かしてアニメーションを作成します。
パターンチェンジ(目パチ・口パク・着せ替え)
Anima2Dではパターンチェンジアニメーションを作成する事ができます。
- メッシュを選択
- Sprite Mesh Animation コンポーネントをアタッチ
- 「+」を押して出てきた欄に、SpriteMeshを設定
- Frameのスライダーを操作してパターンを切り替えます(上から順番に0, 1, 2・・・の値に対応しています)
コツ
- パターンチェンジするSpriteMeshの位置は、最初のメッシュ配置時にピッタリ同じ位置に合わせておきます。
- アニメーションに追従する必要があるので、パターンチェンジメッシュも忘れずに骨をバインドしておきましょう。
- 今回は目なので、パターンチェンジメッシュを全て頭の骨にバインドしています。これで頭の動きに合わせてついてきます。
IKによるアニメーション
IKコントローラーは、そのままアニメーションを付けて、実機再生可能です。
- IK計算のコストを省くには、最後にアニメーションベイクする方法もありますが、全フレームにキーが打たれるのでアニメーションデータが大きくなります。(IKコントローラーを選択 → Unity上部メニュー → Window → Anima2D → Bake Animation)
- IKコントローラーのRecordボタンをONにすることで、IKコントローラーを動かした時に、骨側にアニメーションキーを打つ事ができます。(最後にIK Limb, IK CCD2DのActiveをOFFにするのを忘れずに。IK計算がされたままになります。)
- IKのままアニメーション付けできるのがやはり楽ですが、実機での計算負荷を減らしたい場合は、Recordボタンの使用が落とし所だと思います。
その他
2Dアニメーションを作成していますが、UnityなのでZ軸(奥行き)が存在します。
アニメーションで上手く使えば、面白い表現ができるかもしれません。
■次回:Anima2Dを自動化しよう!スクリプトの作成
作業で面倒だった部分をスクリプトで自動化しましょう!
- Photoshopからのエクスポート(各レイヤー毎の画像と、位置情報の出力)
- 位置情報を元にAniam2Dメッシュを自動配置
- Photoshopレイヤー順にOrderInLayerを設定
- ボーンの配置
- ゲームに出すための最適化
について書く予定です。
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