最近のアーケードゲーム開発

皆様、こんにちは。
セガ・インタラクティブ 第三研究開発本部 開発一部 プログラマの渡邉です。
新年度も始まり、心機一転といった感じでしょうか。本ブログも開始してから1年と8ヶ月程度と相成りました。
時が経つのは早いなと思いつつ、日々ゲーム開発に勤しんでいます。
私は近年アーケード(業務用)ゲーム開発を行っていますが、以前は主にコンシューマ(家庭用)ゲーム開発に携わっていました。
セガグループではコンシューマ、アーケード、PC、モバイル、ブラウザ等々と様々な機種でゲームを開発、リリースしています。
ここまでの技術ブログの記事を振り返ってみれば、様々な所属部門の記事があることがお分かり頂けると思います。
機種が違えば、開発する際の前提やお約束が変わってくるものです。そこで本記事では、自身の経験を元にコンシューマゲーム開発との比較も交えつつ、最近のアーケードゲーム開発について紹介させていただければと思います。なお、アーケードゲームは開発内容によって、紹介したものと環境が違うこともあることを予め申し上げておきます。あくまで一例ということをご理解いただければ幸いです。
過去記事では特定の職種向けのテクニックや事例の紹介が多かったかと思いますが、概括的なお題ということもあり、極力職種問わずの内容になっております。技術的な側面を期待されている方には退屈かもしれませんがご容赦ください。


目次


開発環境/ハードウェア

コンシューマゲーム開発では各プラットフォーマーが提供する開発キットを使用します。(周辺機器等の拡張を除くと)そのハードウェア構成は基本変動することはないので、ハードウェア性能は一定です。ハードウェア性能が決まっている分、素早くソフトウェア開発に移行出来ますが、その制約下で開発することになります。特にマルチプラットフォームタイトルは厳しい制約下でソフトウェア開発を強いられることになるでしょう。
アーケードゲーム開発ではハードウェア構成から検討することになります。その為、タイトルに合わせた最適なハードウェアを構築可能ですが、その分ハードウェア構成の選定には時間がかかりがちです。また、タイトルリリース後しばらくして採用した部品が製造中止になる可能性もあるため、注意が必要です。
なお、アーケード筐体は家庭用ゲーム機に比べ若干大き目なので、スペースの確保が大変です。マルチプレイになると尚更です。


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弊社アーケードゲーム「Wonderland Wars」の開発用筐体エリアです。ちょっとしたゲームセンターですね。

使用言語/ソフトウェア

こちらはコンシューマ・アーケードあまり変わりありません。
クライアントアプリケーションの使用言語は C++ あるいは C# が主です。
最近では Unity や Unreal Engine 等といったゲームエンジンでの開発タイトルが増えています。
敢えて違う点を挙げるとすれば、プラットフォーマーの制約下に縛られないアーケードゲーム開発のほうがオープンソースや外部ライブラリを採用し易いかもしれません。
また、サーバー等インフラも自前で管理する為、専用モバイルアプリケーションやWebサイトとの連動も比較的容易です。(担当者の作業が容易だとは言いませんが…)


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弊社では、アーケードゲームのIP(知的財産)を様々なデバイスに展開する「マルチデバイス×ワンサービス」戦略を掲げており、タイトルに連動したスマートフォンアプリやWebサイト等を同時に開発、提供しています。例えば「Wonderland Wars」では、Web上で戦績等を確認出来る「Wonder.NET」や、スマートフォン向けのサポートアプリケーション「Wonderland LIBRARY APP」の提供を行っております。

ゲームデザイン

アーケードゲームではコンシューマゲームとの差別化を図る為、「家庭での再現は難しい」ことを念頭に置いたデザインを心がけることが多いです。
ディスプレイからコントローラーまでタイトルに最適な構成を構築出来ることはゲームデザイナーにとって喜ばしいことではありますが、やりすぎると移植性に欠けるため、注意が必要です。
また、パッケージ売りのコンシューマゲームと、1プレイ幾らのアーケードゲームではマネタイズが大きく違うわけですが、アーケードゲームでは店舗の利益を考慮し、プレイ回数を稼ぐことが可能なゲームデザインが求められます。1プレイ時間は短く(数分~十数分程度)、それでいてライブで盛り上がるための体験を重視したデザインが好まれます。

エラー処理/データ分析

アーケードゲームでは直接硬貨を投入して遊んでいただいている為、エラー周りの例外処理には気を遣います。
例えば、停電等による電断や通信不良等が発生した場合でも極力不利益が生じないよう、大切なプレイヤーデータを随時バックアップしたり、ある程度の追跡および状況分析が出来るようプレイログ情報を専用サーバーにアップロード等しています。

開発規約/出荷基準

コンシューマゲーム開発では「一定時間以上、画面を静止してはならない」といった各プラットフォーマーが定めた規約(Technical Requirements Checklist 等)を遵守する必要があります。また、CERO や ESRB 等といったレーティング機構の審査もパスしなくてはなりません。
対してアーケードゲーム開発では、共通の規約・審査機構は無く、各メーカー独自で定めています。
弊社でも独自のガイドラインを用意し、デバッグサポートチームや品質保証部の元、厳格にチェック・パスしたタイトルをリリースしています。
また、アーケードゲームは風営法の適用対象なので、仕様作成の段階で法務部と擦り合わせを行う等、法令遵守を心がけています。


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「Wonderland Wars」のチェックリストの一部です。実に 500 超の中項目があり、それぞれに数十~百程度のチェック項目が並んでいます。

顧客層

コンシューマゲームの顧客層は、各プラットフォーマーのターゲット機保有者、ターゲット機で遊んで下さるユーザーです。
アーケードゲームの場合、店舗に足を運んで遊んで下さるユーザーに加え、店舗(オペレーター)も顧客層に含みます。(いわゆる B to B to C の取引形態ですね)
ユーザーに楽しんでいただけるゲーム内容にするのは勿論ですが、店舗がオペレーションしやすい機能を実装することも忘れてはいけません。その為、入力テストや、クレジットの確認、店舗大会用の設定等を可能とする「テストモード」を通常用意します。


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こちらは「Wonderland Wars」のテストモードの一部で、入力デバイスが正常に動作するかのテスト画面です。アーケードゲームでは毎日様々なユーザーにプレイいただくため、パーツの摩耗も激しいです。オペレーターが筐体の状態を確認する際の補助となるよう、このようなモードを用意しております。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
簡単な解説ではありましたが、アーケードゲーム開発とコンシューマゲーム開発、同じゲーム開発でも違いが見て取れたのではないでしょうか。
本記事が皆様の気付きの一助となれば幸甚です。
もしアーケードゲーム開発にご興味を持たれましたらセガ・インタラクティブ採用サイトを、
逆にコンシューマゲーム開発のほうが面白そうだと思われた方はセガゲームス採用サイトを、
とにかくゲーム作りに関わりたいと思われた方はセガグループ採用サイトを是非ご確認ください。
我々セガグループは共にゲームを作り続けてくれる方々を歓迎します。
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